ミスタラと言うワールドに関しては翻訳ページにあるFAQを参照されたい。
多くの方がご存知とは思うが、
ミスタラはAD&DとOD&Dの双方の側面を持つ。
どちらも多元宇宙構造と言う共通した宇宙観の中に存在してはるが、
これらの間の違いは、
AD&D(2nd.edition)とOD&Dが外見上非常に類似しているが
実際には全く異なるシステムの上に成り立っているのと同様に、
非常に大きなものである。
既にTSRからのオフィシャルな支援がストップしてしまった今、
特に後者に関する情報は非常に入手しづらいものがある。
宇宙構造に言及したものの中で、日本語化されているものは極めて少なく、
コンパニオンとマスタールールのマスター用ブックの中で語られているのがそのほとんどであろう。
英語版に目を移せば、イモータルルール(いわゆる金箱)において
その全容が語られたわけであるが、
さらにそれ以降に第5版OD&Dルール(ルール・サイクロペディア)に対応する形で、
茶色のボックスセット「Wrath of the Immortals」が発表された。
これにおいてイモータルに関するルールは一新され、
アウタープレーンを含む多元宇宙構造がより詳しく説明されるに至った。
こうした現状を鑑み、
もはや息も絶え絶えのOD&Dではあるが
プレイの一助になればと思い、
かかるページを設ける次第である。
内容の基本は上述した「Wrath of the
Immortals」(以下WotI)の内容の一部を中心に、
宇宙構造を説明していくものである。
ミスタラを含むOD&Dワールドは多元宇宙構造になっている。
宇宙は惑星ミスタラが存在する空間、すなわちプライムプレーンのみならず、
多くのプレーンを内包しているのである。
プレーンを大別すると、インナープレーン、アウタープレーン、
そしてそれらの間に横たわるアストラルプレーンである。
インナープレーンにはプライムプレーンのほかに、
四つのエレメンタルプレーンが含まれる。
さらにインナープレーンにはイセリアルプレーンが含まれている。
イセリアルは先に述べた五つのインナープレーンを包み込むようにして存在している。
一方、アウタープレーンにはインナープレーンの住人にとっての神、
すなわちイモータルが居を構えている。
アウタープレーンの数は誰にも分からず、
およそ人知を超えた自然法則に支配されているところもある。
アウタープレーンはインナープレーンの外側に位置しているが、
これらは互いに触れ合ってはおらず、一方から他方へ行くためには、
イセリアルプレーンをさらに包み込むような形で
存在しているアストラルプレーンを越えて行かねばならない。
この多元宇宙を構成する要素こそ、五つの力の領域である。
既に邦訳されたルールブックの中でも述べられているように、
力の領域とは特定の場所を指す言葉ではない。
これらはまさに多元宇宙の構成因子なのである。
その五つとは物質、エネルギー、時間、思考、エントロピーである。
これらとアライメント、もしくはエレメントとの関係は
既存のルールブックを参照されたい。
ここで特筆すべきなのは、イモータルになるためにモータルが進むべき四つの道において、
各領域が好意を有するキャラクタークラスが
マスタールールセットとWotIでは異なっているということである。
WotIでのルールを以下に記す。
イモータルへの四つの道 | 好意的なキャラクタークラス |
ポリマス | 特に無し。 全クラス、及び多くのモンスター種族が試みる道。 |
パラゴン | マジックユーザー、 エルフ |
ダイナスト | クレリック、ドルイド、パラディン、 アベンジャー、ドワーフ |
エピックヒーロー | ファイター(パラディン、ナイト、アベンジャーを含む)、 ハーフリング、シーフ、ミスティック |
この変更により、今まで好意による特典を受けられなかったデミヒューマンも
その恩恵を受けることが可能となった。
イモータルとはいわゆる「神(god)」であり、AD&Dでいう「パワー(power)」である。
だがOD&Dワールドであるミスタラに固有の神々であるイモータルはOD&Dのルールにおいて特化している。
特筆すべきなのは、一部の例外を除き、総てのイモータルがかつてはモータルであり、
前節で言及したイモータルへの道を踏破し、自らの力で不死性を獲得してきたという点である。
なお、公式にはルール化されていないエントロピー・イモータルへの道も
ミスタラ・メーリング・リストにおいてサポートされるなどして、こうした事実は補完されている。
彼らは上述の五つの力の領域に必ず属しており、その所属する領域からパワー
(注;ここでのパワーは上記のAD&Dの神ではなく、活動能力や魔力を意味する)を得ている。
力の領域とイモータルの関係は必ずしも明確ではない。
と言うのも、イモータルは力の領域のために活動し、その恩恵としてその領域からパワーを得ているという図式からは
あたかもその関係はイモータルとクレリックの間の関係である支配と従属という形に見えるが、
同時に力の領域自体に意思などはなく、それを形作り、なおかつ体現する存在こそイモータルであるという視点からは
イモータルこそ力の領域そのもの、もしくは少なくとも力の領域を構成するパーツであるという見方もできよう。
先ほど力の領域とイモータルの関係はイモータルとモータル・クレリックの関係によく似ているといったが、
実態としては大きな相違がいくつも見受けられる。
それはイモータルはかつてのモータル時代に大きく関係した個人的な目標を持ち、
時には同じ領域に属するイモータル同士の対立が起こるなど、かなり自由度の高い意思を持つことからもそれが窺える。
モータルではルールにおけるアライメント・チェンジに相当する変節が起こりうるが、
イモータルにおいては自分が属する力の領域を離れるということは、少なくとも筆者の知る範囲においてない。
その理由として先ほど述べたイモータルと力の領域との関係が大きく関わってきている。
彼らはまさに力の領域そのものであるが故に、そこから離れて存在することはありえないのである。
モータルは様々なエレメンタル、様々なアライメントが入り乱れたいわば不純物質であるとするならば、
イモータルは五つの力の領域の内の一つからのみ構成された純物質なのである。
純金は金のみにてできており、それが少しずつであれ総入れ替えであれ、銅と置き換わった時点で、
純金ではいられないのと同じ理屈である。
そしてそのような変節の可能性を含んだモータルは不死性への道の過程で淘汰されているはずである。
ただしこれには例外がある。エントロピーの領域である。
エントロピーはその目的ゆえに利己的な理由、あるいは何らかの邪悪な意思により変節した者を非常に好む。
それこそ英雄的行為の過程で、あるいは不死性への道の半ばで邪悪な誘惑によって堕落し、
その目的を遂げられなかった者は数知れず、さらにはエントロピーのイモータルに到達した者さえいるのである。